御劔 光の風3
「私たち神官は故郷である別世界からこの中心世界であるオフカルスに代表として来ていたのよ。でもここにいる間はオフカルスの住人扱いになるから故郷との関わりが禁じられていたの。」

「禁じ?」

「ええ。謀反の心配がないようにって所かしらね。でも年に一度、監視者を置けば言葉を交わすことが出来た。世界を見ることが出来る水鏡、それを使って他国とやり取りすることを水鏡の見と言うのよ。」

マチェリラの説明に圭も頷く。

「玲蘭華は掟を破って母国であるカリオと水鏡でやり取りしたという事なんでしょうね。」

マチェリラの声が低くなっていくのを感じながら貴未は納得の頷きを繰り返した。

マチェリラの言葉に耳を傾けていた一同は自然の流れで再びカルサに視線を向ける。

それに促されるようにカルサは重たい口を開いたところだった。

「…沙更陣、審議にかけられるということは誰かに見付かったということだ。…玲蘭華は何をしようとしていたんだ?」

さっきまで淡々と答えていた沙更陣はここに来て表情を歪めゆっくりと首を横に振る。

「…分からない。玲蘭華がカリオに繋げていたとされているのも、玲蘭華が泣きながらカリオの長を呼んでいたからなんだ。」

「泣きながら?」

「戴冠式の前日だよ。意識も朦朧としてうわ言の様に、長、長と言っていたそうだ。…事情が事情なだけに委員会もあまり公にはしなかったみたいだよ。」

カルサは眉を寄せて考えを巡らせた。

ここに来て知ったことが多い、それはカルサの怒りを混乱させるほどの衝撃を持っていた。

真相を明かした方がいいのだろうか、いや、それでも。

厳しくなっていく顔付きがふわりと解き放たれたように和らいだ。

「理由がどうであれ…俺のやるべきことに変わりはないか。」

そう呟くとカルサはしっかり顔を上げて沙更陣と向かい合い口を開いた。

こうして顔を合わせるのもおそらく最後だ。

「沙更陣、終わらせる為に行ってくる。」

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