君の『好き』【完】
下を向いたまま、そっと海くんの指に触れると、
海くんは、ぱっと避けるように離した。
「ごめん俺......宇崎もわかるだろ?
剣道の後って、手が超小手臭いって。
だから......」
私はもう一度、海くんの指に手を伸ばして、
小さく首を振った。
「そんなの、気にしない......」
海くんを見つめると、真っ赤な顔のまま目をそらして、
ぎゅっと手を繋いでくれた。
初めて繋いだ、海くんの手は、
すごく温かくて、少しごつごつしていた。
なんでだろう.......
手が温かいのに、胸がじーんとして、
なんだろう.......この気持ち。
海くんがやっとこっちを向いてくれて、
目が合うと、お互い一緒に噴き出して笑った。
幸せだと思った。
きっと、海くんといたら私はずっと幸せでいられる。
海くんを好きになりたい……
私、海くんを好きに……
その時、ふと吉井くんを思い出して、ハッとした。
どうして、こんな時に思い出すんだろう。
こんなに海くんと一緒にいて、幸せなのに、
海くんを好きになりたいと思っているのに、
どうして……
頭の中の吉井くんを消したくて、
下を向いてぶんぶんと首をふった。