君の『好き』【完】
私の家の前に着くと、海くんはそっと私の手を離した。
「じゃあ、また明日」
海くんはズボンのポケットに手を入れた。
「うん」
私が頷くと、海くんも小さく頷いて笑ってくれた。
そして、海くんは駅の方向をちらっと見て、「うわっ」と驚いた。
私もその方向を見ると、弟の宙くんがひとりでこっちに歩いてくるのが見えた。
「やべっ.....見られた」
海くんは下を向いて髪をくしゃくしゃっとした。
「こんばんはー」
宙くんがにやにやしながら私たちの前で立ち止まった。
「こんばんは」
「宇崎先輩、やっと兄ちゃんの気持ちに応えてくれたんですか?」
え。
「ちょっ、お前、余計なこと言うなよ!」
「兄ちゃん、中1の時から宇崎先輩のことがうごぐごうご......」
海くんが宙くんの口元を押さえた。
「お前、あとで覚えとけよ!ごめん、じゃあな!宇崎」
宙くんは、口元の海くんの手を離した。
「これからうち来ませんか?」
「えっ?」
「だから、宙!お前.......」
「今日、兄ちゃんの誕生日ってわかってます......よね?」