君の『好き』【完】
どうしても、追いかけたかった。
どうしても、その腕を掴んで引き止めたかった。
どうしても……
海くんの左腕を両手でぎゅっと掴むと、
海くんの手がズボンのポケットから出た。
「あ......う、うん」
海くんの腕からぱっと手を離すと、
一緒に噴き出して笑って、それから海くんの家へと歩いた。
海くんの家は知っていたけど、中に入ったことはなくて、
玄関の前まで来ると、ものすごく緊張してきてしまった。
そういえば、男の子の家に行くなんて初めて.......
海くんが玄関を開けると、海くんのお母さんが奥の部屋から飛び出してきた。
「わあー!鈴ちゃん!
いらっしゃい!上がって上がって!!」
海くんのお母さんは、小柄でとてもかわいらしい人だと、
引っ越してきた時見てそう思った。
お母さん同士は仲良しだけど、私は挨拶ぐらいしかしたことがない。
「すみません、突然......」
「いいのいいの!海が鈴ちゃん連れてくるなんて嬉しくて......」
お母さんは、スリッパを二つ出した。
「鈴ちゃんのお母さんには、うちで夕御飯食べるからって連絡してあるからね。
ゆっくりしていって」