君の『好き』【完】
椅子の背もたれに両腕を乗せている海くんは、
少し切なそうにその腕に顎をのせた。
私がぶんぶんと大きく首を振ると、
可愛く目を細めて、あはははっと笑った。
その笑顔を見て、この人を悲しませたくないと思った。
海くんが私を大切にしてくれるように、
私も海くんを大切にしたいって、心の底からそう思った。
「海くん、私......このままじゃ良くないと思うの。
私......」
「ちょっ、ちょっと待って」
海くんは私に右手を開いて、下を向いた。
「やっぱ......いいや。うん。
ごめん、続けて」
海くんはまた背もたれの上に腕を戻し、顔を上げた。
「ちゃんと私......吉井くんのこと忘れるから。
これからもずっと、海くんのそばにいたいと思うから......
私、ちゃんと吉井くんのこと忘れる。
ちゃんと、海くんのことだけを考える」
緊張した.......
ドキドキしている胸を押さえると、海くんは顔を真っ赤にして、ガバッと背もたれの上にある両腕に顔を伏せた。
「えっ???海くん???」
私が呼んでも顔を上げてくれなくて......
「ちょっ、待って.....
やばい、超かっこわるい......俺......」
そう言って、少ししてから両腕から顔を上げると、
真っ赤な顔の口元に手の甲を当てて、あはははっと笑い出した。
「もう会わないとか言われんのかと思った。
すげぇー嬉しい........
俺.......ほんと嬉しい.....」
こんなに喜んでくれるんだ......
真っ赤な顔で、かわいく笑っている海くんを見て、
胸がじーんと温かくなった。
「海くん、お誕生日おめでとう」
きっと私は、海くんを好きになる。
吉井くんが私の中から消える日が来る。
「ありがとう、宇崎」
ははっと照れ臭そうに笑う海くんを見つめながら、そう思った。