君の『好き』【完】
海くんは前を向きながら、手の甲を口元にあてた。
「2月10日。
場所は、この駅の反対側、西口からバスが出ていて、
3番のバス停で『武道館行き』に乗れば着くよ。
でも......」
「でも?」
海くんはこっちを向いた。
「宇崎がいたら俺、集中できない」
あはははっと笑ってまた前を向いた。
「えぇ.....じゃあ、行かない方がいいかな......」
海くんは下を向いて、私の手をぎゅっと繋いできた。
「いいよ、来て。
俺、頑張るから」
そのままこっちを見ないで言った海くんの横顔が、
赤くなっていくのを隣から見つめていたら、
ふと後ろから視線を感じて、手を繋がれたまま後ろを振り返った。
すると、少し後ろを歩く吉井くんと、
バチッと目が合ってしまった。