君の『好き』【完】
そんな.......海くん、何言って.......
「宇崎に正直な気持ち、伝えてやれよ」
吉井くんは顔を上げた。
「今更.....」
「今更じゃねーよ。
宇崎は、ずっと今でも吉井が好きなんだよ。
俺といても、俺がずっとそばにいても、
どんなに笑わせても、
どんなに......
どんなに俺が頑張っても、
お前には勝てねぇんだよ!!」
海くんの後ろ姿、
海くんは俯いて、片手で顔を押さえた。
「なんで、そんなことを俺に言うんだよ。
このまま、俺に何も言わないで、
渡瀬が鈴のそばにいればいいんじゃないのか。
なんでそんな、自分に不利になるようなことをするんだよ」
海くんは手を下ろして、顔を上げた。
「宇崎が好きだからに決まってんだろ。
すげー好きなんだよ.......
宇崎の気持ちを1番に考えてやりたい。
俺じゃないんだよ。
宇崎が好きなのは俺じゃない。
ちゃんと気持ち伝えてやれよ.......
もうあんな風に泣かせんな!」
海くん......そんな......
「海くん!!!!!!」
もう、我慢ができなくて木の影から飛び出すと、
海くんが振り向いて、その前まで走った。
「海くん、どうしてそんな......」
海くんは泣きそうな顔から、あはははっと笑い出した。
「ちゃんと、吉井と話しな」
えっ.......
「頑張れ、宇崎。じゃあな.......」
海くんは、走って校庭の方へと走って行ってしまった。
「海くん、待って!!」
海くんを追いかけようとした時、
ガシッと腕を掴まれて振り向いた。
「吉井......くん......」
「ちょっと、話そう」