君の『好き』【完】
もう、泣きすぎて正気じゃなかった。
瞬なのか、類なのか、
わからなかった。
黒髪の瞬を見ても、髪を染める前の類に見えて、
私は、瞬に抱きついて泣いた。
「愛莉は、何も悪くない」
そう言って、私の頭を優しく撫でてくれた。
すがりたかった。
瞬を類に重ねることでしか、
私には立ち直る術がなかった。
形見になってしまった私のあげたレザーのブレスレットと、
お揃いのリング。
そのブレスレットにリングを通すと、
瞬の左腕につけた。
いけないとわかっていた。
そんなことしたら、いけないって、
本当はわかっていたのに、
止めることができなかった。
「瞬につけてほしい」
涙目で訴えた私に、
「わかった」と、類と同じ低音の甘い声で答えた。
そして、
毎朝、類と通っていた高校を、
今こうして私は、
瞬と駅まで通っている。
「今日、帰りも一緒に帰らない?」
バス停に向かう前、瞬を見上げてそう言うと、
瞬は目をそらした。
「俺、部活があるから」
「待ってる。駅で待ってるから」
瞬は、ふわふわとした黒髪をくしゃくしゃっとかいた。
その仕草を見て、また類を思い出した。
類と同じ.......
「わかった」
「ありがとう。じゃあ、駅着いたら電話して」
瞬は、小さく頷くと高校の方へ歩き出した。
白いワイシャツ、グレーのズボン。
同じような制服で、
後ろ姿が類にしか見えなかった。
「類.......」
小さくなっていく背中に、
思わずそう、呼びかけた.......
+++愛莉side end+++