君の『好き』【完】
彼女 (鈴side)
校門で沙希の彼氏に挨拶をして、
それからひとりで駅へと歩いた。
10分ほど歩き、駅構内に入ると、
いつものように、プラプラと駅ビルの中のお店を見て回った。
洋服を見たり、靴を見たり.......
プラプラとひとりで歩いていたら、
お兄ちゃんの好きなブランドのお店の前に来た。
お兄ちゃんは、大学1年。ちなみに彼女と別れたばかり。
そういえば......
『鈴、俺の誕生日は○○○のパーカーでいいから。
よろしく!』
お兄ちゃん、そんなことを言っていたような......
誕生日は、今度の日曜日。
しかたない、買ってやるか......
薄暗い照明で、ガンガン音楽が鳴っている男臭い店。
店の外から見ると、ちょっと怖そうなお兄さんか、恋人同士しかいない。
こんなちんけな女子校生がひとりで入る店じゃないよ、お兄ちゃん!
やっぱ、日曜日お兄ちゃんと一緒に見て、本人に選んでもらおう......
そう思って、そのお店の前を通り過ぎた。
そしてその後、本屋で雑誌を立ち読みして、
エスカレーターで駅に降りると、
改札へと向かった。
その時、東口から見覚えのある人が歩いてきた。
あ、吉井くんだ。
白い大きなエナメルバッグを斜め掛けして、
スマホをいじりながらこっちに向かって歩いてくる。
「吉井く.......」
声を掛けようとしたら、
私の前を、髪の長い女の子が横切って、
吉井くんに駆け寄った。