君の『好き』【完】
海くんは私の前で立ち止まり、
「何してんの?」と白い息をはきながらそう言った。
海くんは少し困ったような表情で少し首を傾げていて、
その顔がなんだか子犬みたいで、すごくかわいいと思ってしまった。
「何って......海くんを待ってた」
「え???」
「海くんに、会いたかった」
私がそう言うと、海くんはバッと手の甲を口元に当て下を向いた。
「何やってんだよ......」
そう言って手を離し、頬を真っ赤にして顔を上げた。
「いつから待ってたの?」
「うんと......さっき.....かな」
寒くて寒くて、両手をぐーにして立っていたら、
そっと左手を握られた。
「すっげー冷てぇーじゃん....いつからいたんだよ」
海くんに握られた手が温かくて、
そっと手を開いて、海くんの手を私からぎゅっと握った。
「海くんの手、あったかいね」
もう片方の海くんの手も握り、向き合ったまま両手を繋ぐと、
心までじーんと温かくなってきた。
やっぱり私、海くんといると温かい気持ちになる。
「なんか.....幸せ。
海くんといると幸せ」
なんだか恥ずかしくて、下を向いたまま正直な気持ちを話した。
「罪悪感なんかじゃないから、
放っておけないとか、そんな気持ちじゃないから。
吉井くんに好きって言われても、
付き合おうって言われても、
私は、海くんのそばにいたいって、
海くんを大切にしたいって思った。
私を、信じて......
これからもずっと、私は海くんと一緒にいたい......」