君の『好き』【完】
海くんがどんな顔をしているのか、ちらっと上目で見ると、
海くんは、今まで見たことないぐらい真っ赤な顔をしていて、
目が合うと、パッとすぐに下を向いてしまった。
ずっと海くんの両手を握っていたら、海くんがぎゅっと握り返してきた。
「もう、渡せないよ」
えっ.......
海くんは真っ赤な顔を上げて、真剣な眼差しで私を見つめた。
「この先もずっと宇崎と一緒にいたら、もっと宇崎を好きになる。
これ以上好きになったら俺.......
もう、吉井に渡せないよ」
海くん......
「今ならまだ、笑って宇崎を見送れる」
私は大きくブンブンと首を振って、両手を繋いだまま一歩近づき、
海くんの胸におでこを当てた。
「海くんとずっと一緒にいたい.......」
海くんはそっと両手を離すと、優しく抱きしめてくれた。
初めて海くんに抱きしめられて、すごく幸せで、
海くんの背中に回した手をぎゅっとした。
そっと両肩を押されて、海くんの胸から顔を上げると、
すぐ目の前に、海くんの顔があって、
私の知ってるかわいい海くんじゃなくて、
ちょっと大人っぽい海くんだったから、その表情にドキッとした。
海くんは真っ赤な顔で目をそらし、
「あ、やばい俺......朝練遅れる」と、私の肩から手を離した。
海くんが私から離れて気づいた。
私今、ものすごくドキドキしている......
海くんがぎゅっと手を繋いできた。
「行こ」
海くんはこっちを見ないで、私の手を引いて歩き出した。
「うん」
海くんの隣から空を見上げると、
いつの間にか空が明るくなっていた。
「朝練の時、宇崎どうすんの?」
「海くんの練習見てもいい?」
「マジか、俺集中できないって......」
「じゃあ、こっそり見る」
「変わんねぇーよ」
海くんは、下を向いて笑った。
他愛もない話を、またこうしてすることができて、
嬉しくなって、繋いだ手をぎゅっとした。
「無理すんなよ」