君の『好き』【完】
海くんは私と目が合うと、下を向いてしまった。
「海くん.....」
ガタンとすぐに立ち上がって、海くんの元に駆け寄ると、
海くんが顔を上げた。
海くんの前髪は少し立っていた。
「朝練、終わったの?」
「あぁ.....うん」
海くんは少し切なそうに笑って、また下を向いてしまった。
元気ない......
もしかして、吉井くんと話していたから誤解させてしまったかな.....
「海くん、私......さっき吉井くんと話していたけど……」
海くんはパッと顔を上げた。
「うん」
「もう今は、好きって気持ち……ないから」
海くんは少し考えてから、「うん」と頷いた。
......ほら、やっぱあのふたり付き合ってんじゃないの?
そんな声が聞こえてきて、ふと周りを見ると、
女子たち何人かが私たちを見ていた。
「お~い、教室入れよ~」
海くんのクラスの担任の先生が、海くんの頭をぽんとノートで叩いて、
通り過ぎていった。
「じゃあ、また後でね」
私がくるっと向きを変えると、ガシっと腕を掴まれてびっくりしながら振り向いた。
「海.....くん?」
海くんは、苦しそうな顔で私の腕を掴んでいた。
「どうしたの?」
海くんは下を向くと、そっと腕を離した。
「やっぱ.....なんでもない。ごめん、俺も行くわ」
そう言って自分の教室の方へと歩いて行ってしまった。
掴まれた腕に、海くんの感触が残っていて、
腕を触りながら、私も自分の席に戻った。