君の『好き』【完】
その日の帰り道も、海くんは元気がなかった。
俯きがちで、何か考え事をしている様子だった。
「なんか、あった?」
最寄駅に着き、家へと歩きながら海くんに話しかけた。
「あぁ、ごめん。ちょっと考え事してた」
海くんはこっちを見ないで、俯いたまま答えた。
結局家の前に着いてしまい、海くんの前に立って顔を覗き込むと、
やっと海くんがこっちを向いてくれた。
「じゃあ、明日朝メールしてね。一緒に学校行こ」
海くんは、じっと私を見つめていた。
「海くん?」
「宇崎、俺.......」
海くんは一度下を向いて、また私の顔を見つめた。
「宇崎に、付き合おうって、もう言ってもいいかな......」
えっ......
「宇崎を、俺の彼女にしたい」
俺の.....彼女......
そう言われて、また胸が温かくなる感じがした。
小さな街灯の明かりでも、海くんの顔が赤くなっているのがわかる。
嬉しかった。
私はゆっくり海くんに近づき、海くんの背中に手を回して、
ぎゅっと抱きしめた。
「ちょっ、えっ???宇崎?えっ?」
戸惑っている海くんに、
私は自分の気持ちを素直に伝えた。
「海くんの彼女に......なる」
私がそう言うと、海くんも優しく抱きしめてくれた。
「うん......なって」
海くんはそっと私の肩を押して離れると、噴き出して笑い始めた。
「めちゃめちゃ緊張した俺.......」
手の甲を口元に当てて、照れくさそうに笑う海くんを見て、
こんなにかわいく笑う人が、
こんなに私を想ってくれる人が、
私の彼氏なんだなって、幸せな気持ちになった。
もう絶対に離さない。
離れない。
私は海くんと幸せになる......
海くんの笑顔を見ながら、そんなことを心に誓っていた。