君の『好き』【完】
「あの!!」
院内に入り、
愛莉さんの後ろから声をかけると、愛莉さんは驚いたように振り返った。
「あぁ、瞬の......」
はぁはぁと、息切れしながら愛莉さんの前に立つと、
愛莉さんは今にも泣きそうな顔をした。
「吉井くんは、大丈夫......なんですか......?」
肩で息をしながらそう聞くと、愛莉さんは苦しそうに答えた。
「瞬のお母さんからの電話だと....
命に別状はないって、意識ははっきりしているって、
瞬は大丈夫だって……」
そっか.......
「よかった......」
私がほっとして大きく息をはくと、愛莉さんは下唇を噛み締めて、涙をこぼし始めた。
「怖い.......私、あの日を思い出して怖くて......」
あの日........
海くんは私の手をそっと離して、私に大きく頷いた。
震える愛莉さんの肩に私の手を置くと、愛莉さんは両手で顔を覆った。
「あの日もこの病院だった......
同じように、お母さんから電話がかかってきて、
意識がないって、もう危ないって.......
瞬まで同じだったらどうしようって.......
怖くて......私、怖くて......」
私は愛莉さんの肩を優しくさすった。
「吉井くんは、意識があるんですよね?」
愛莉さんは、何度も頷いた。
「吉井くんは、吉井くんです。
お兄さんではないです」
愛莉さんは、両手から顔を出した。
「そうですよね......愛莉さん」