君の『好き』【完】
小さく頷いた愛莉さんは、涙を指で拭った。
「瞬は瞬......
そうだった。私、そのことでいっぱい瞬を傷つけて......
ちゃんと謝ったばかりなのに、ダメだね、私」
それから愛莉さんと一緒に、吉井くんのお母さん達のところへ行った。
吉井くんのお母さんは、吉井くんによく似ていて、
とても綺麗な人だったけど、少しやつれているように見えた。
検査と処置を終えて、吉井くんに会えたのは、
お昼すぎだった。
お父さんお母さん、愛莉さんに続いて病室に海くんと入ると、
左足と左手に包帯を巻いた吉井くんがベッドの上にいた。
「あぁ、鈴......渡瀬......」
吉井くんの左頬には少し擦り傷があった。
「大丈夫か?」
海くんが声をかけると、吉井くんは少し笑って、「いてっ」と顎を触った。
「左足と左手の小指の骨折だってさ。
ごめんな、心配かけて」
「そうよ、全く心配かけて」
吉井くんのお母さんが深いため息をつくと、お父さんが何度も頷いた。
「類のためにも、瞬には生きていてもらわないと困るのよ」
「類がいないんだから、瞬がしっかりしないとダメだろ」
「類の代わりに瞬が......」
「あの!!!!!」
お父さんとお母さんの言葉に、どうしても我慢できなくて、
その言葉を止めた。
「吉井くんは......
お兄さんがいなくなった寂しさを埋めるために生きているんじゃない......
吉井くんは、お兄さんの代わりに生きているんじゃないです!!
ちゃんと吉井くんを見てあげてください。
お兄さんの代わりとしてじゃなくて、
ちゃんと吉井瞬として、見てあげてください!!
吉井くんには、吉井くんの道があるんだから......
ちゃんとその道を歩かせてあげてください!!!」