君の『好き』【完】
公園のベンチに座ると、
地面の落ち葉たちが風でくるくると転がっていった。
「寒い?」
「ううん。大丈夫」
私が返事をしてから、しばらく海くんが黙ってしまって、
今日の自分を思い出して、海くんに謝りたくなった。
「ごめんね。海くん」
「なんでまた謝ってんの?」
「私、海くんの彼女なのに、吉井くんのこと心配して......」
海くんは、あはははっと笑ってリュックを背負ったまま、
ベンチの背にもたれた。
「心配するのは、当然だよ。俺も心配したし......」
「私、何やってんだろう。
学校飛び出して、海くんに迷惑かけて、
あんなに熱くなって吉井くんの両親に......」
膝の上に肘をついて両手で顔を覆った。
「だから、迷惑なんて思ってないって。
気にすんな。
それに、宇崎は何も間違ったこと言ってないと思うよ。
俺だって、吉井の親の言葉にカチンときたし。
吉井は兄ちゃんのことで、いろいろ苦しい思いをしていたのかもな......
でもさ、あれで吉井の親は気づいたと思うよ。
自分たちが、どんなに吉井を苦しめていたか......
宇崎が言ってよかったんだよ」
私は両手を膝にもどして、顔を上げた。
「そうかな......」
「でも、吉井の親も、辛かったんだと思う。
息子ひとり失って、そのことで頭ん中がいっぱいだったんだよ。
吉井の気持ちも考えてやれないぐらい、
苦しかったんだと思う。
相手の気持ちを考える余裕って、
自分がいっぱいいっぱいだとないだろ」