君の『好き』【完】
12月に入り、
吉井くんが怪我をしてから2週間ほど経ったある朝、
ずっと休んでいた吉井くんが、
バスケ部のジャージ姿で、松葉杖をついて登校してきた。
左手の小指も骨折しているから、松葉杖もつきにくそうで、
ゆっくり一歩一歩教室に入ってくると、「大丈夫?」とみんなから声をかけられ、
吉井くんはそのひとつひとつに軽く頭を下げていた。
吉井くんは窓際に松葉杖を立てかけると、
ロッカーの前まで片足でぴょんぴょんと飛んで移動し、
斜めがけしたバッグを下ろそうとした。
「手伝うよ」
私は思わず椅子から立ち上がって、吉井くんのバッグの肩紐を持った。
「あぁ、ありがとな」
吉井くんはロッカーに手をついて、頭を下げた。
想像していたよりもずっしりと重いバッグを「よいしょっ」と持ち上げて、
吉井くんの体から下ろした。
ふっと目の前で吉井くんが顔を上げて、至近距離で目が合ってしまい、
思わず一歩下がると、吉井くんは手を伸ばして私からバッグを取り、
ロッカーの上にボンと置いた。
そして自分の席までまた、ぴょんぴょんと飛ぼうとしたから、
吉井くんの腕を掴んでその体を支えた。
「私の肩とか、腕とか.....歩くとき使っていいよ」
吉井くんは、私から腕を引っ張り返して、
包帯の手を私の頭にポンと乗せた。
「お前じゃ支えきれねぇーだろーが、ちび」
あはははっと笑って、ぴょんぴょん飛んでひとりで自分の席に座った。