君の『好き』【完】
私の顔が......
「あはははっ、俺バカだよな。
ほんと、バカだな俺......」
その時教室に担任が入ってきてしまい、
吉井くんは、黙ってしまった。
授業中、吉井くんの利き手は右手だから、そんなに困っている様子はなかったけど、
歩くときは大変そうで、
立ち上がる時、松葉杖を取ったり置いたりする時などは、
手伝うようにした。
「いいから、手出しすんな」
放課後になると、吉井くんは私が手伝うことを拒むようになった。
「だって、大変じゃん」
立ち上がった吉井くんの腕を掴んだ。
「バッグ?私がこっちに持ってくるから」
「いいって。俺、自分でやるから」
吉井くんは私の制止を振り切って、ロッカーへとぴょんぴょん飛んでバッグを斜めがけした。
私が松葉杖を持って吉井くんに渡すと、
吉井くんは困ったように私の顔を覗き込んだ。
「ありがとな。
でも、俺自分でできるから。
もう、手出しすんな、わかったな」
言い聞かせるように私の頭をぽんぽんと撫でると、
松葉杖をついて教室から出て行ってしまった。
階段、大丈夫かな......
心配になって、教室から出ると、海くんがリュックを背負って廊下に立っていた。