君の『好き』【完】
こっちを見ないまま海くんは私の手を繋ぎ、
教室の電気を消すと一緒に教室を後にした。
寒い夜空の下、二人手を繋いで歩いた。
いつものように電車に乗り、最寄駅に着いて私の家の前まで来ると、
海くんが繋いだ手を離した。
明日は土曜日。
海くんは土曜日は部活で、日曜日は総合体育館で所属している剣友会の稽古と、
なんだか忙しい。
だからいつも土日は、家に着いたらメールをもらって、
公園で少し話したりしていた。
「また明日、部活終わったらメールしてね」
「わかった」
小さな街灯の下、海くんのかわいい笑顔が優しく照らされている。
「そうだ。もうすぐクリスマスだね」
「あぁ、そっか......」
「クリスマスは部活?」
海くんは、少し俯いてしまった。
「たぶん、部活だな」
そっか......
「少しは、会えるよね?」
海くんは、ふっと笑ってから頷いた。
「じゃあ、また明日ね」
海くんは頷いて、自分の家の方向に歩き出したかと思ったら、
途中で立ち止まってすぐに引き返してきた。
「どうしたの??」
海くんは俯いていて、パシッと私の右腕を掴むと顔を上げた。
いつものかわいい顔が、急に大人っぽくなって、
その真剣な眼差しにドキっとした瞬間、
海くんの顔がふっと近づいて、海くんの唇が私の唇に一瞬だけ触れた。
「また……明日……」
それだけ言って、海くんは向きを変えて歩いて行ってしまった。
一気に心拍数が上がって、バクバクとものすごいスピードで動いている心臓
火照った顔
海くんの感触が残る唇
初めてのキス.......
海くんが家の中に入っても、しばらくその場から動けなくなってしまった。