君の『好き』【完】
海くんには秘密だから、買った毛糸が海くんにバレないか心配だったけど、
紙袋に入れてくれたから安心しながらエスカレーターを下りた。
今は3時。
少し早いけど、改札のある2階に行き、
駅構内の柱の前で海くんを待ち伏せすることにした。
海くんびっくりするかな......
なんでここにいんのって、
いつから待ってたのって、
また照れくさそうに笑ってくれる。
そんなことを思いながら待っていたら、
学校とは反対側の西口の方から、松葉杖をついて歩いてくる吉井くんが見えた。
吉井くん......?
思わず駆け寄って吉井くんの前に立つと、
吉井くんはびっくりした顔で固まった。
「鈴......」
吉井くんはカーキ色のモッズコートを着ていて、
黒いカーゴパンツで足のギプスを隠していた。
「なにしてんの?そんな足で......どこ行くの?」
吉井くんは松葉杖に体をもたれて下を向いて笑った。
「病院だよ。東口に良い整形外科があるから。
骨折が早く治る治療してくれんだよ、そこ。
早く部活戻りたいからさ」
病院か.......
「大丈夫?なんか手伝おうか?階段大丈夫?」
吉井くんは首を傾げて、私の顔を覗き込んだ。
「だから大丈夫だって。体動かさないと体がなまっちゃうからさ。
鈴は?なにしてんの?」