君の『好き』【完】






松葉杖にもたれて、少し下から私の顔を覗き込む吉井くん。



吉井くん、髪伸びたなって思った。


少し、前髪が目にかかっている。



「私は......これ。海くんにクリスマスプレゼントを買って......


ていっても、これから編むからちゃんと渡せるかわかんないけど」




「編む?」



「うん。マフラー編もうと思って。


あ、でも海くんには絶対に内緒だよ。



できるかわかんないし。


できたら驚かせたいし」




紙袋の中を見せながら吉井くんに言うと、吉井くんは、くしゃっと目を細めた。



「大丈夫だよ、鈴ならできるって。



わかった、誰にも言わないよ。


頑張れ、鈴」





そう言って、松葉杖にもたれながら私に手を伸ばして、



頭をぽんぽんと撫でると、そのままその手を下げて私の髪を指でつまんだ。




「なんでずっとストレートでいんの?」




えっ.....



【そっちのほうがいい】




吉井くんにそう言われてから、ずっとストレートにしていた髪。





「なんでって......」




なんでだろう、私。


全然気にしていなかったけど、なんでだろう.......


下を向くと、吉井くんがするっと指から髪を離した。




「ごめん。変なこと言った」



吉井くんはまた松葉杖に手をかけようとした時、


片方の松葉杖の先が少しだけつるっと滑って吉井くんがよろけた。



思わず片手で吉井くんの体を支えると、


片方の松葉杖が床に倒れた。

















< 157 / 205 >

この作品をシェア

pagetop