君の『好き』【完】
松葉杖にもたれて、少し下から私の顔を覗き込む吉井くん。
吉井くん、髪伸びたなって思った。
少し、前髪が目にかかっている。
「私は......これ。海くんにクリスマスプレゼントを買って......
ていっても、これから編むからちゃんと渡せるかわかんないけど」
「編む?」
「うん。マフラー編もうと思って。
あ、でも海くんには絶対に内緒だよ。
できるかわかんないし。
できたら驚かせたいし」
紙袋の中を見せながら吉井くんに言うと、吉井くんは、くしゃっと目を細めた。
「大丈夫だよ、鈴ならできるって。
わかった、誰にも言わないよ。
頑張れ、鈴」
そう言って、松葉杖にもたれながら私に手を伸ばして、
頭をぽんぽんと撫でると、そのままその手を下げて私の髪を指でつまんだ。
「なんでずっとストレートでいんの?」
えっ.....
【そっちのほうがいい】
吉井くんにそう言われてから、ずっとストレートにしていた髪。
「なんでって......」
なんでだろう、私。
全然気にしていなかったけど、なんでだろう.......
下を向くと、吉井くんがするっと指から髪を離した。
「ごめん。変なこと言った」
吉井くんはまた松葉杖に手をかけようとした時、
片方の松葉杖の先が少しだけつるっと滑って吉井くんがよろけた。
思わず片手で吉井くんの体を支えると、
片方の松葉杖が床に倒れた。