君の『好き』【完】
海くんの隣に行くと、海くんは私を見て目を細めた。
ホームに下りると、
「それ、どうしたの?」と海くんが毛糸の紙袋を不思議そうに覗き込んできたから、
私はぱっと自分の後ろに紙袋を隠した。
「これは......なんでもない」
「秘密?」
「うん、秘密」
「そっか.....うん、わかった」
それから海くんは黙ってしまった。
電車に乗っても、窓の外を眺めて何か考えている様子で、
何も話しかけてこなかった。
最寄駅に着き、私の家の前に着くと、私は海くんの腕を掴んだ。
「公園で、少し話そ」
海くんは重たそうに防具袋を肩に掛け直した。
「ごめん。今日は......帰る」
海くんは切なそうに笑って自分の家の方へと歩いて行ってしまった。
追いかけることができなかった。
海くんを悲しませている自分が嫌で。
吉井くんに揺れてしまった自分が嫌で。
どうしたらいいのかわかない自分がもっと嫌で.......
海くんが家の中に入って見えなくなると、私も家へと入った。