君の『好き』【完】
日曜日も海くんは稽古で忙しくて会えず、
私はお母さんに教えてもらいながらマフラーを編み始めた。
海くんのことを思いながら、ひと目ひと目、
大切に編んだ。
今までたくさん優しさをくれた海くん。
そんな海くんを悲しませてはいけない。
「なんだよ鈴、マフラーなんか編んでんのかよ」
ソファーでお母さんの隣に座ってマフラーを編んでいたら、
お兄ちゃんが後ろから覗き込んできた。
「海に?」
「うん。クリスマスプレゼント」
「手編みかぁ、海、喜ぶだろうな」
「海くんと鈴が結婚してくれたら、お母さん万々歳だわ」
「えっ???結婚????」
思わず編む手を止めて、お母さんを見つめた。
「だってこんなに近いし、海くんのお母さんとは仲良しだし、
なんてたって、海くんはイケメンだから!可愛い孫が生まれてくるわ~」
そこまで考えているとは.......
私はまたマフラーを編み始めた。
「ま、仲良くやんなさい」
ふふっとお母さんが微笑んだ。
海くんと結婚........
海くんは優しいから、
海くんと結婚したらずっと幸せでいられるんだろうな......
優しい旦那さん
優しい......パパに.......
そんなことを想像してしまった。
「なに想像してニヤついてんだよ、キモッ」
「に、ニヤついてなんかいないよ!キモって言うな!!」
あはははっとお兄ちゃんがからかうように笑った。
ひと目ひと目編みながら海くんとの未来を想像した。
私、幸せだ。
海くんといれば私、ずっと幸せでいられる。