君の『好き』【完】
●第5章●
限界
沙希が帰り、しばらくひとりで教室で待っていると、
ドアが開いて海くんが顔を出した。
すぐに駆け寄って海くんの手を繋ぐと、海くんは切なそうに笑って電気を消した。
「ごめんね、海くん」
「なんだよ、いきなり謝って」
階段を下りながら海くんが、あははっと笑った。
「吉井くん今怪我しているから、色々と助けてあげてて、
でもそれは友達としてであって、好きだからとかそんなんじゃないから」
下駄箱前に着くと、海くんは立ち止まった。
「そっか......そうだよな」
海くんは手を離して自分の下駄箱の方へ向かった。
二人駅へと向かい駅前近くなると、クリスマスのイルミネーションが輝いていた。
マフラー早く編み上げなくちゃ。
そう思いながら、駅へと歩いた。
それから他愛もない話をして、それはいつもの海くんだったから、
すごくホッとした。
電車の中も、最寄駅に着いても、海くんは可愛い笑顔を浮かべて、
たくさん笑ってくれた。
私の家の前まで来ると、海くんは繋いだ手を少し引っ張って、
私をぎゅっと抱きしめてきた。
「大丈夫だ。俺は......宇崎を信じる。
大丈夫だ」
大丈夫......
何度も自分に言い聞かせるように、
海くんは抱きしめながらその言葉を繰り返していた。
「ごめんね、海くん」
そんな風に思わせてしまう事に謝りたくなった。
海くんはそっと私から離れて「じゃ」と、自分の家の方へと歩いた。
海くんの背中を見つめて思った。
すごく好きで、好きで.......大好きで......
この気持ちは、言葉では言い尽くせない......
どうやったら、この気持ち全部が、
海くんに伝わるだろうか.....