君の『好き』【完】
海くんの声がして、吉井くんと同時にその声の方を向くと、
制服姿の海くんがこっちに向かって走っていた。
吉井くんが私から離れて松葉杖を拾おうとしたら、
海くんが松葉杖を拾って吉井くんに渡した。
「宇崎と二人で話がしたい」
吉井くんは松葉杖を受け取って俯いた。
「ごめん」
吉井くんはそれだけ言って、下駄箱に行き玄関から出ていった。
「部活、休んだよ」
海くんは下を向いたまま話し続けた。
「クリスマスイブだから。少し顧問と話して、部長と話して、
帰らせてもらった」
そうだったんだ.......
「吉井のことが、まだ好きなの?」
海くんがやっとこっちを向いた。
「違う、好きじゃない。
そういうことじゃない。
違う!」
何人か生徒たちがこっちに向かって歩いてきて、
海くんは下駄箱の方へ入った。
「とりあえず帰ろう」
そう言って玄関から出ていった。