君の『好き』【完】
帰り道、俯いて黙り込んでいる海くんに、
私はずっと話しかけ続けた。
「私、キスしてない」
「うん」
「私、吉井くんのこともう好きじゃない」
「うん」
「でも吉井くんを切ることなんてできない。
友達でいたいと思うことはいけないことなのかな......」
ホームで電車を待っている間、海くんにそう言うと、
海くんは少し私を睨んだ。
「友達?
友達って、抱き合うのか?
友達って、キスしようとすんのか?」
「それは......突然されて」
「なんで拒めないの?」
拒めない.......
その時電車が来て、二人で乗り込んだ。
電車の中でも、ずっと海くんの言葉を考えていた。
どうして拒めなかったのか.......
突き飛ばしてでも、拒むべきだった。
電車を下りると、
「海くんごめん」と謝った。
海くんは、何も言わなかった。
家の前に着くと、海くんはリュックの中からリボンのついた袋を出した。
「これ、使って」