君の『好き』【完】
放課後部活に行く海くんに声をかけた。
「髪、切ったの?」
別れても、海くんが私の髪に気づいてくれたことに嬉しくなった。
「うん。部活、頑張ってね」
海くんは小さく頷くと、階段を下りていった。
私は沙希と一時間教室で話して、一緒に校門に行き、
それから一人で帰ることにした。
もう、海くんを待たない。
私は、嫌われてしまっているから......
一人で帰るようになり、休み時間も海くんと一緒にいないようになると、
別れたという噂が広まり、
海くんが何人もの女子から告白され始めたと沙希から聞いた。
でも、海くんは『部活に集中したい』と言って断っているらしい。
もし海くんが他の女子と付き合ったら.......
それは、海くんの幸せを願わなくちゃいけないのかな........
帰り、ひとりで電車に乗り海くんからもらった手袋を眺めた。
朝も帰りも毎日つけている手袋。
海くんに温められているみたいで、なんだか泣きたくなってしまった。
駅に着き、家へと歩いていると、
「宇崎先輩」と後ろから呼ばれて振り返った。
「宙くん......」
宙くんが少し走って私の隣に来た。
「兄ちゃんと別れたって本当ですか?」