君の『好き』【完】
「あぁ......うん。私がいけないの。
私が優柔不断な態度を取ったから。海くんに嫌われちゃって」
「兄ちゃんが振った?あははっ、マジか」
宙くんの笑った顔は海くんによく似ていて、海くんを思い出してしまった。
「冬休み、兄ちゃん超イライラしていて、宇崎先輩と喧嘩でもしたのかよって言ったら、
別れたんだよって、めっちゃイラついてたんですよ。
だからてっきり振られたのかと思ってたけど、兄ちゃんが振ったんだ」
「うん、振られちゃった」
私が笑いかけると、宙くんは切なそうな顔をした。
「宇崎先輩は、まだ兄ちゃんのこと好き?」
私はすぐに大きく頷いた。
「だったら、大丈夫ですよ。
兄ちゃんはそんな簡単な気持ちで宇崎先輩を好きになったんじゃないから。
宇崎先輩が兄ちゃんのこと全然眼中ない頃からずっと、
ずーーーと宇崎先輩のことが好きだったのを、
俺、知ってますから。
抱きついてチュウでもしちゃえば、即仲直りですよ!あはははっ。
じゃあ、兄ちゃんのこと頼みますね。イラつかれてめっちゃ迷惑してるんで」
じゃっと軽く手を上げて宙くんは家へと行ってしまった。
家の前で立ち止まった。
中学の頃から、私を好きでいてくれたなんて、
全然その頃気付かなかった。
ちっちゃくて、かわいくて、まるで弟みたいで。
でも今は、ぐっと背が伸びて、顔つきも体も男らしくなって........
また海くんの笑顔を思い出してしまった。
海くんはいつも笑っている人だったのに、
私は、悲しませてばかりだった。
私は海くんの笑顔が好き。海くんには笑っていてほしい。
【いっぱい笑わせるから。絶対に泣かせたりしないから】
海くんの想いを、私は台無しにしてしまった。
だから、
今度は私が海くんを笑わせたい。