君の『好き』【完】






2月10日  大会当日



すごく寒い朝。



来ないで欲しいと言われて、泣きすぎてまぶたが重い。



布団から出て鏡を見ると、ひどい顔。


まぶたはパンパンだし、目は充血しまくっているし。




はぁと深いため息をついた。


洗面所に行き、短くなった髪をとかした。




じっと鏡に映る自分を見つめて考えた。


このまま来ないで欲しいと言われて、本当に行かなくていいの?


自分の気持ちを伝えなくていいの?


後悔しない?




私は自分の顔から目をそらした。


絶対に、後悔する。



私はもう一度自分の顔を見つめた。



「頑張れ、鈴」





私は自分に頷くと、急いで出かける準備をした。






何時から始まるのか、海くんの出番は何時なのかわからないけど、


とにかく、武道館に行こうと思った。





ダッフルコートを着て、海くんからもらった手袋をはめて、

リュックを背負い部屋から出ようとした時、



やっぱりもう一度部屋に戻って、クローゼットを開けた。

しまいこんでいた手編みのマフラー。


またもらってくれないかもしれないけど、



もう一度渡してみよう。




そう思ってリュックを前に回して中に突っ込み、





部屋から飛び出した。





「あぁ、鈴そんなに走ったらまた転ぶから。気をつけなさいよ。


どこ行くの?」





階段の下でお母さんに声をかけられた。





「海くん、今日大会だから、応援しに行く」



「そう、気をつけてね」



「うん!」




私は玄関を出て、駅へと走った。

















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