君の『好き』【完】
走っている間、海くんのことを思い出していた。
元気ないじゃんって、声をかけてくれたこと
大きなおにぎりを見せて、笑わせてくれたこと
泣き止むまでそばにいてくれたこと
吉井くんを本気で怒ったこと
渡せないって言ってくれたこと
彼女にしたいって......
私、本当に愛されていた。
こんなに愛されていたのに、どうして私は......
手袋で目をこすって、走った。
武道館に着き、はぁはぁと呼吸を整えながら、長い階段を上った。
階段を上りきったところで中に入ると、
剣道の掛け声が聞こえてきた。
2階が階段状に応援席になっていて、1階が試合会場になっている。
人が多すぎで、
何が何だか、どこにうちの高校がいるのか全くわからなかった。
とりあえず応援席を下まで下り、試合会場が見渡せるところまで来て、1階を見下ろした。
その時、壁にうちの高校の横断幕が見えて、その裏の応援席に海くんが座っているのが見えた。
そこまで行こうと、また応援席の階段を一段上ったところでふと立ち止まった。
【宇崎がいると集中できない】
【来るな、絶対に、来ないで欲しい】
海くん、もしかして私に見て欲しくないのかもしれない。
私はまた元の場所に戻って、少し遠いけどここから眺めることにした。