君の『好き』【完】






「違うよ、海くん」



海くんは両肘をついたままこっちを向いてあはははっと笑った。




「宇崎が何度も違うって言ってくれても、


俺、信じることができなかった。





自信がなかったんだよ。


俺のこと、好きじゃないんだろうなって思ってたから。



いつ吉井に持っていかれるか、ずっと不安だった」



私は手袋を片方はずして、海くんの手を握った。



「俺、今超小手臭いけど」



「そんなのいいの。



私、海くんのことが好き。ずっと私はちゃんと好きだったんだよ。


ずっと一緒にいたいって思ってたし、

すごく、その......


海くんに触れていたいってずっと思ってた」




「なっ......何言ってんだよ......」




海くんはまた下を向いてしまったけど、繋いだ手をぎゅっとしてくれた。



「海くん.....



私を、もう一度彼女にしてください。



今度は、私が海くんを笑わせるから。


もう絶対に海くんを悲しませるようなことしないから」






海くんは、あはははっと笑って片手で顔を覆った。




「海くん?」



「やばい、あはははっ、ちょっと待って」




海くんは前髪をくしゃくしゃっとしてから、片手を下ろした。




「優勝しても泣けなかったのに、なんでこんな......俺超かっこわりぃ」



海くんはそう言って、私から顔を背けて、反対側を向いた。





「海くん、こっち向いて」



「無理」




「え、無理じゃなくて。こっち向いてよ」





「だから、ちょっと待てって」




「海くん」




私は繋いだ手を離すと、海くんの頬を両手で挟んで、


こっちを向かせた。



私の両手に挟まれた海くんの顔は、


まるで子犬のように、目をうるうる潤ませていて、



それがすごくかわいくて、愛おしくて.......



「海くんが好き」




どうしても触れたくて、私からチュッとキスをした。




海くんの頬から手を離すと、海くんは真っ赤な顔で頭を抱え込んだ。



「もう俺.....だめだ......ちょっとしばらくこっち見んな」





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