君の『好き』【完】
こっちに走ってきた宙くんは、少しおしゃれな格好をしていた。
「なにしてんすか?」
「海くんを待っていて.....ていうか待ち合わせは10時なんだけど。
なんか楽しみすぎて、早く来ちゃった」
宙くんは、あはははっと笑った。
「やっぱ仲直りしたんだ。昨日大会から帰ってきたら、なんかずっとニヤついてっから、
キモかったんすよ!ははっ!
白いマフラーあげたの宇崎先輩ですよね?」
「あぁ......うん」
「見せろよーって言ったら、『ぜってー触らせねぇー』って、超大事そうにしてましたよ」
「そうなんだ......なんか嬉しいな.....」
「そうだ、ちょっと」
そう言って宙くんは私の腕を掴んで引っ張ってきた。
「えっ?何???」
引っ張られるがままに宙くんの後について行くと、
海くんの家に行き、玄関の中に入れられた。
「兄ちゃん朝めっちゃ弱いんですよ。
いっつも出かける直前まで寝てるんで、
部屋行って起こしちゃってください」
「えっ、だめだよそんな.....」
「大丈夫大丈夫」
宙くんは靴を脱いで、また私の腕を引っ張った。
いいのかな......
少し不安になりながら、私も靴を脱いで宙くんの後ろから階段を上った。
宙くんはそっと海くんの部屋のドアを開けて、中を覗き込んだ。
「やっぱ爆睡してる。じゃ、俺デートなんで」
宙くんは軽く手を上げて階段を下りて行ってしまった。