君の『好き』【完】
大きく首元の開いた白いロンTに、
ゆったりとしたグレーのスウェットのズボンを履いて頭を抱え込んでいる海くん。
「あ.....あのね。ちょっと私、一時間早く公園で待っちゃって。
そしたら宙くんに会って、部屋行って海くん起こしてって言われて.....」
「宙かよ、あいつ……くっそ.......」
海くんはまた髪をくしゃくしゃにして、
軽く膝を立てて壁に寄りかかり、
座ったまま顔を上げた。
「おはよう。海くん」
「おはようじゃねぇよ......」
そう言って片手で顔を覆ってしまった。
「さっき、私のこと『鈴』って呼んでくれて嬉しかった」
「えっ???俺???」
片手から顔を出すと、海くんは真っ赤な顔で、
また頭を抱え込んだ。
「すっげー恥ずかしいんだけど.......」
「名前で呼んでほしいな......海くん」
「呼べるか、そんなの......」
そんな......さっきは呼んでくれたのに......
私はリュックを下ろして、手袋を取ると、
ベッドの上に乗っかった。
「ちょっと待て、来んな」
海くんは私に右手を開いて見せた。
「えっ」
「来んなって」
私は口を尖らせて、海くんの隣にくっついて座った。
「ちょっ、くっつくなよ......」
離れようとした海くんの腕にしがみついた。
「名前で呼んでくれないと、離れない」
海くんはまた片手で顔を覆った。
「勘弁してくれよ......」