君の『好き』【完】





大きく首元の開いた白いロンTに、


ゆったりとしたグレーのスウェットのズボンを履いて頭を抱え込んでいる海くん。


「あ.....あのね。ちょっと私、一時間早く公園で待っちゃって。


そしたら宙くんに会って、部屋行って海くん起こしてって言われて.....」




「宙かよ、あいつ……くっそ.......」




海くんはまた髪をくしゃくしゃにして、

軽く膝を立てて壁に寄りかかり、

座ったまま顔を上げた。




「おはよう。海くん」




「おはようじゃねぇよ......」



そう言って片手で顔を覆ってしまった。



「さっき、私のこと『鈴』って呼んでくれて嬉しかった」






「えっ???俺???」


片手から顔を出すと、海くんは真っ赤な顔で、


また頭を抱え込んだ。



「すっげー恥ずかしいんだけど.......」




「名前で呼んでほしいな......海くん」



「呼べるか、そんなの......」



そんな......さっきは呼んでくれたのに......




私はリュックを下ろして、手袋を取ると、


ベッドの上に乗っかった。



「ちょっと待て、来んな」


海くんは私に右手を開いて見せた。



「えっ」



「来んなって」



私は口を尖らせて、海くんの隣にくっついて座った。




「ちょっ、くっつくなよ......」



離れようとした海くんの腕にしがみついた。


「名前で呼んでくれないと、離れない」




海くんはまた片手で顔を覆った。



「勘弁してくれよ......」






< 198 / 205 >

この作品をシェア

pagetop