君の『好き』【完】
風間先輩に出会えたから、
沙希に出会えたから、
私は、この東高校に入学して良かったと思った。
背が高くて大人っぽい沙希。
それに比べて、
背が小さくて、子供っぽい私。
でも、沙希はそんな私といつも一緒にいてくれる。
だから、私は沙希が大好きだ。
2学期も1週間ほど過ぎた。
2学期に入ってすぐにした席替え。
窓際一番後ろの席。
もうすぐ放課後だ......と、
これから見に行く風間先輩のことを思い浮かべていた。
授業中なのに、風間先輩を思い出していたら、
隣から視線を感じて、ぱっと右隣を見た。
すると、隣の男子が頬杖をついてこっちを見ていた。
えっ。
ちょっと睨むように見て、また前を向いてしまった。
なんか、感じワル。
席替えしてから隣になった、この顔の小さい黒髪男子。
名前は......なんだっけ。
正直、男子は風間先輩以外全く興味ないから、
クラスの男子の名前が......えっと.....
「ここ、じゃあ.....吉井」
「はい」
返事をして、隣の男子が立ち上がった。
そうだ、吉井くんだ。吉井......瞬(よしい しゅん)くん!
吉井くんって背が高いな.......
座っていると、顔が小さいからそんなに感じないけど、
立ち上がると、その背の高さをすごく感じた。
吉井くんは、問いの答えを言うと、
また席に座った。
吉井くんはまた左手で頬杖をついて、
でももうこっちを向かないから、
ふわふわとはねた黒髪の下の小さな顔は、
私からは見えなくなった。