君の『好き』【完】
海くんの出かける準備が終わると、一緒に玄関を出た。
海くんは紺色のダッフルコートに、
私の編んだ白いマフラーを巻いてくれている。
また片方だけ手袋をはずして、海くんの手を繋いだ。
海くんはそんな私を見て、ふっと笑って手を繋いだまま、
自分のコートのポケットの中に入れた。
「あったかい」
そうだ、海くんは温かい.......
「どこ行く?宇崎はどこ行きたい?」
「だから、鈴!」
「呼びにくいな......」
ははっと笑って海くんがこっちを向いた。
「鈴はどこ行きたい?」
海くんの笑顔に、私もつられて笑顔になった。
「寒いから、どっか温かいとこがいいね」
「ちょっと遠いけど、プラネタリウム行く?」
「星!行く!!プラネタリウム行く!」
二人で目を合わせて、一緒に笑って駅へと歩いた。
海くんは優しい。
その優しい心に私は温められて、
動かされて、
私は海くんを好きになった。
最初この気持ちがなんだかわからなかった。
人を好きになるって、
見た目がタイプだとか、
一緒にいると胸がきゅんきゅんするとか、
そういうことだと思ってた。
そういう気持ちも確かに
「好き」という気持ちかもしれないけど、
私は一緒にいると、
優しくて温かくて穏やかな気持ちになる、
この海くんへの気持ちが、
私の本当の「好き」ってことなんだって気づいた。
海くんとなら、ずっと一生優しい気持ちでいられる。
海くんとなら、ずっと一生幸せな気持ちでいられる。
もう絶対に離さない。
私は海くんのことが心から「好き」だから。
私の「好き」は、全部海くんだけのものだから。
ずっと一生……