君の『好き』【完】
「転入生の渡瀬海くんだ。
渡瀬くん、ひとこと挨拶」
中学1年の2学期。
隣の県から引っ越してきて、この中学に転入することになった。
「○○県から転校してきました、渡瀬海です。
よろしくお願いします」
......『うみ』だって。あはははっ
......顔も女みたいだけど、名前も女っぽい。
......かわいい!!
そんな声が聞こえる中、俺は頭を下げた。
「席は、窓際の一番後ろだ。
おい、宇崎、いろいろ教えてやってな」
「はい」
窓際の一番後ろに座ると、前の席の女子がくるっと振り向いた。
「ねぇ、渡瀬くんってうちの近所に引っ越してきたんでしょ?
この前、渡瀬くんのお母さんがうちに挨拶に来たの」
その子は、ニコッと俺に微笑んだ。
「あぁ、そうなんだ」
「わかんないことがあったら、なんでも聞いて」
そう言ってまた前を向いた。