君の『好き』【完】
えっ。
「別に、いいけど......」
宇崎はニコッと微笑んで「やったぁ」と喜んだ。
「じゃあ、これから海くんって呼ぶね」
「うん....」
宇崎が俺を「うみくん」と呼ぶようになってから、
周りの生徒たちもみんな俺を下の名前で呼ぶようになった。
それからなんとなく、自分の名前が好きになっていった。
宇崎に名前を呼ばれるのが、嬉しくて......
あれ、なんで俺......嬉しいんだろう……
気づくと、宇崎ばっか見ているし……
いつも笑っていて、いつも俺に話しかけてくる。
そんな宇崎に惹かれている自分に気づいた。
俺、宇崎が好きだ。
でも俺なんか全然眼中無いどころか、
「なんか海くんって弟みたい、かわいい!」って、
宇崎の恋愛対象にも入っていない。
部活の帰り道、一緒に隣を歩く宇崎を見た。
俺とほとんど変わらない身長。
「海くん、昨日○○ってドラマ見た?」
「あぁ、見た」
「あの刑事役の俳優さん、超かっこよくない?」
「刑事役?あぁ、あれね。
宇崎はああいうのが、タイプなの?」
「うん!めっちゃタイプ!
背が高くて、ちょっとヤンキーっぽい人!超かっこいい!」
背が高くて、ヤンキー
俺の真逆じゃねぇか.........
両手を合わせて、キャーキャー言っている宇崎を見て、
ふと思った。
もし俺が、君に好きだと言ったら、
どんな顔するだろうか.......
「海くん見て!星!!超きれいだよ!!!」
宇崎と一緒に俺は夜空を見上げた。
「ね!綺麗だね!!」
俺は見上げるのをやめて、
夜空を眺めて微笑んでいる宇崎を眺めた。
いつか君の好きって気持ちが、
俺に向く日が、来るだろうか.......
「プラネタリウム行ってみたいな......」
「プラネタリウム?」
「うん。
いつか、
好きになった人と……」
【君の好き】
end
2014.1.11