君の『好き』【完】
「えっ......」
急に顔が熱くなって、心臓がバクバクしてきてしまい、
下を向いて吉井くんの指を見つめた。
鈴って......
男の子に下の名前を呼び捨てにされるなんて、
初めて........
だから、なんか違和感?
それとも、吉井くんに呼ばれたから?
なんだろう、この気持ち。
「鈴?」
もう!!!何回も呼ばないでよ!!!
ちらっと上目で吉井くんを見ると、
吉井くんは首を傾げて私の顔を覗き込んでいた。
なんだか、その顔がかわいくて、
パッと目をそらして、指にぐるっと絆創膏を巻きつけた。
「えっ、マジかこれ」
吉井くんは自分の目の前に手を広げて、
絆創膏を見つめた。
「めっちゃ、ハートだらけなんですけど」
あっ!やばっ!絆創膏の柄なんて全然気にしないで、
巻きつけてしまった.......
白い絆創膏に、赤いハートが盛りだくさん。
ほんとだ、めっちゃハートだらけ......
「ごめっ、ほんとごめん!!!
ちょっと待って、今違う柄の絆創膏に貼り替えるから!!」
リュックに手を伸ばしたら、パシッとその手を掴んで止められた。
ドキッとした。
だって、手を握られている........
吉井くんはくりくりの瞳で、私の顔を覗き込んできた。
「いいよ、これで。
ありがとな、鈴」
吉井くんは私から手を離して、
あはははっって笑いながら、またハートの絆創膏を見ていた。
自分の手に残る、吉井くんの手の感触。
どうしてこんなに、吉井くんにドキドキするんだろう。
もしかして私.......
吉井くんのことが.......