君の『好き』【完】
おおおお.......
「お、怒ってないし!全然っ!怒ってないんですけど!!」
吉井くんに、下から顔を覗き込まれて、
ちょっと斜めから見上げたその上目な視線に、
なぜかきゅんとしてしまった。
吉井くんは、噴き出して笑って、
「怒ってんじゃん」って、
体を起こして椅子の背に持たれた。
「あれは隣に住んでる、ただの幼なじみだよ」
そう言ってちらっと私を見て、ははっと笑った。
「てっきり、彼女かと思った。
その......手首のブレスレットにリングもぶら下がっているし」
「あぁ、これか......」
吉井くんは、自分の手首を掴んで、
リングをつまんだ。
「これさ.......
これは、俺の兄ちゃんの形見なんだ」
えっ.......
なんか、聞いちゃいけないことを聞いてしまったような気がして、
「ごめん」と、思わず謝ってしまった。
吉井くんはそんな私を見て、優しく微笑んだ。
「なんで、謝るんだよ。
気にすんなって。
そうだよな、こんなの付けてたら俺.......
いつまでも彼女できないよな」
そう言ってブレスレットを外そうとしたから、
思わず手を伸ばして、吉井くんの手を掴んだ。
「外しちゃダメだよ!大事なものでしょ!
大切にしなよ!」