君の『好き』【完】
吉井くんはちょっと驚いたような顔で、
私を見た。
ぎゅっと吉井くんの手を強く握っていることに気づいて、
恥ずかしくなってバッと手を離した。
吉井くんは私から目をそらして、
じっと手首のブレスレットを見つめた。
切なそうな、
悲しそうな顔で。
どんなお兄さんだった?
何歳?
優しいの?
吉井くんに似てる?
いろんなことを聞きたかったけど、
吉井くんの顔を見ていたら、
そんなことできないと思った。
なんで私、ブレスレットの話なんかしちゃったんだろう。
そうだ、話しを変えよう。
えっと、
えっと.......
あ、そうだ!
「あのね、私にも大学1年のお兄ちゃんがいるんだけど、
明後日誕生日でね、
○○○っていうブランドのパーカーが欲しいって言ってて。
そのお店、駅に入っているんだけど、
一人じゃ入りにくくて.......
吉井くん、明日暇?」
「明日?」
「吉井くん、一緒にお店に入ってくれると助かるなぁ......なんて。
あぁ、その幼なじみさんと、約束があるとか、
無理なら全然いいの!」
あああああ........なんか勢いで図々しくも買い物に誘ってしまったけど、
隣の幼なじみさんとデートだったらどうしよう......
いいのいいの、ほんと、幼なじみさんとデートなら、
全然ほんと断ってくれていいの!
いや、ちょっとショックだけど。
いやいや、そんなしかたないじゃん!!!
うん、うんと自分で自分に頷いて、
ちらっと横目で吉井くんを見ると、
吉井くんは、ふっと笑って首を振った。
「約束なんかないよ。
明日は午前中、部活だから.......
午後からでいいなら、
買い物付き合うよ」