君の『好き』【完】
吉井くんはぐっと椅子の背にもたれた。
「ほんと......?いいの?」
「いいよ」
優しい声で言われて、
やっぱ、吉井くんって優しいって思った。
よかった......
なんか、すっごく嬉しい.......
「あ、ありがとう........」
私が小さく頭を下げると、吉井くんは体を起こした。
「1時には駅に行けるから。
そんぐらいに、駅の交番前で待ってろよ」
「交番?」
私が首を傾げると、吉井くんは頬杖をついてちょっと上目で私を見た。
「連れて行かれないように、
おまわりさんに守ってもらえ」
えっ。
なにその子供扱い。
「ちょっ、子供扱いしないでよ!
交番前じゃなくても大丈夫ですー」
もう!吉井くんって優しいんだか、
いじわるなんだか、わかんない!!
いっつも私をバカにして!!
ぷくっと頬をふくらませて、ふんっと前を向くと、
教室に先生が入ってきた。
「俺が、心配なんだよ」
えっ......
隣から吉井くんの優しい声が聞こえて、
ぱっと吉井くんの顔を見たら、
「起立」
号令がかかって、
吉井くんは頬杖をやめて下を向いたまま立ち上がった。
私も立ち上がり、挨拶を済ませ、
また椅子に座ると、
ちらっと横目で吉井くんを見た。
すると、吉井くんとうっかり目が合ってしまって、
ばっと目をそらして前を向いた。