君の『好き』【完】
待ってろって......えっ???
こんなちょっとの怪我、しょっちゅうだから、
私にとっては何ともないんだけどな.......
そう思いながら立ち上がって、顔を上げると、
体育館から箱を持った吉井くんが飛び出してきた。
そして私の前まで来ると、私の手首を掴んで、
すぐそばにある、校舎に続く3段しかない階段まで引っ張ると、
「そこ座れ」って、手首を離した。
言われたとおりに階段の1段目に座ると、
吉井くんは私の前に膝まづいて、持ってきた救急箱を開いた。
「いいよ、そんな......たいした怪我じゃないし」
私がそう言うと、救急箱から消毒液を取り出した吉井くんが、
顔を上げた。
いつも見上げている吉井くんが、
ちょっとタレ目の大きな瞳で、下から上目で私を覗き込むから、
そのかわいさに、きゅんとしてしまった。
「お前は、黙ってろ。いいか、しみるぞ」
え。しみる?
冷たい消毒液を傷に吹きかけられて、
じりじりと傷が痛み出した。
「じびるぅーーーーーー!!!!!!」
両手をぐーにして、ぷるぷると震えていたら、
吉井くんが噴き出して笑った。
そして笑いながら、優しく脱脂綿で傷口を拭いてくれて、
ガーゼタイプの大きな絆創膏を貼ってくれた。
「よし」
そう言ってまた下から顔を覗き込むから、
膝まづいてまるで王子様みたいだ......なんてバカみたいなことを思いながら、
「ありがと」って小さく頭を下げた。
「誰と帰んの?」
「誰って......いつも一人だけど」
吉井くんは少し考えて、救急箱の蓋を閉じた。
「家どこ?」