君の『好き』【完】
「愛莉......」
あいり......さん。
吉井くんは私の頭からそっと手を離した。
この人、この前吉井くんと一緒に歩いていた人だ。
背が高くて、スタイルが良くて、大人っぽくて、
この、ストレートの長い黒髪.......
愛莉さんは、こっちに近づいて、
私と吉井くんの間に立った。
背の高い二人の前、
小さな自分、
童顔で子供っぽい自分、
なんだか惨めな気持ちになって下を向いた。
「誰?」
愛莉さんの声に顔を上げると、
愛莉さんは、睨むように私を見ていた。
その冷たい視線に、
ちょっと怖くなってまた下を向いた。
「愛莉には、関係ないって言っただろ」
「関係ある!隣の席の子?あの絆創膏の子?」
絆創膏......あ、あのハートだらけの絆創膏、
愛莉さん見ちゃったんだ.....
「瞬に近づかないで」
えっ.......
「愛莉!何言ってんだよ!お前さぁ......」
「あ、あの!吉井くん!!」
幼なじみの二人。
ふたりの関係をおかしくしてしまったらいけないと思って、
吉井くんの言葉を止めた。
「あの私......
ただの隣の席なだけですから。
ハートの絆創膏も、全然変な意味なんかなくて......
ごめんなさい。
きょ、今日も私が転んじゃって......
ただそれで吉井くんが送ってくれただけですから。
だから、あの.......
ごめんなさい!!」
私はその場から離れて、改札へと走った。
「鈴!!」
吉井くん......
吉井くんが呼んでくれたけど、
私は振り向くことができなくて、
そのまま改札を通ってホームへと走った。