君の『好き』【完】
「鈴!!」
淡いピンクと底の部分が焦げ茶色のリュックを背負った、
小さくて華奢な、鈴の後ろ姿。
栗色の緩く巻かれた長い髪をふわふわと揺らしながら、
下を向いて改札に走って行ってしまった。
「瞬......」
愛莉に呼ばれて、隣を見ると、
愛莉は泣いていた。
「私、時間かかるかもしれないけど、
類の代わりじゃなくて、ちゃんと瞬を好きになるから。
だから、そばにいてよ......
私、瞬がいないと生きていけない...
類がいなくなって私......辛い......
毎日毎日、類のところに行きたいって思っちゃう。
だからお願い、そばにいて......」
泣きながら俺のワイシャツの袖を掴んだ愛莉。
俺は駅の高い天井を見上げた。
類......俺はどうしたらいいんだよ......
お前の大切な愛莉を、どうしたらいいんだよ......
お前が一生守るんじゃなかったのかよ......
だから俺......愛莉を諦めたんだろ........