君の『好き』【完】
ずっと愛莉が好きだった。
ずっと愛莉を見てきた。
だから、
愛莉が類しか見ていないことも、
俺は苦しいほどわかっていた。
類が愛莉を好きなことも気づいていた。
「瞬、俺さ愛莉と付き合ってもいいかな......」
中3の頃、部屋に入ってきた類に言われて、
その時、どうにかして愛莉を諦めようと思った。
「瞬の分も俺、一生愛莉を守っていくから」
俺の分も.......
類は気づいていたんだ、俺の気持ちを。
「俺のことは気にすんなよ」
類にそう言うと、類はふっと笑って部屋から出ていった。
それからずっと二人を避けてきた。
俺は俺の道を行くんだって、
もう愛莉のことは忘れようって思っていた。
時々二人でいるのが目に入ってきて、
最初は胸が痛んだけど、
もう、だんだんと慣れてきて、
高校入る頃には、何も感じなくなっていた。
それなのに、
突然類がいなくなって、
愛莉が、俺の元にきて、
俺を好きになるって言われて.......
【瞬の分も俺、一生愛莉を守っていくから】
手首のブレスレットを掴んだ。
俺はお前の代わりに、愛莉を守らなくちゃダメか?
類の分も、俺が一生愛莉を守っていかなくちゃダメなのか?
いつまでも泣いている愛莉に、
「帰るぞ」と声をかけると、
愛莉は俺の手を握ってきた。
さっきまで鈴と繋いでいた手。
鈴の手は、折れてしまいそうなぐらい華奢だった。
そんなことを思い出して、
「ごめん」って、
愛莉の手を離して、西口へと歩き出した。