君の『好き』【完】
自分の部屋に戻って、ベッドに腰掛けた。
もうそろそろ出なくちゃ、1時前には着かない。
【瞬に近づかないで】
昨日のことを思い出した。
吉井くん、来ないかもしれない。
でも、私の名前を呼んでくれた.......
来なくてもいいから、やっぱり待ち合わせ場所には行こう。
もし来なかったら、明日お兄ちゃんと買いにいけばいいか。
私は立ち上がって、リュックを背負った。
机の上に置いたキャラメルの箱。
結局、あれから一個も食べてない。
食べられない......だって、もったいなくて。
箱をそっと持つと、
リュックを前に回して、リュックのポケットに箱をしまい、
また背負いなおすと、部屋から出て階段を下りた。
「行ってきます」
リビングにいるお母さんとお兄ちゃんに声をかけた。
「俺も行くから」
お兄ちゃんは大きく首元が開いたTシャツに、
シルバーのフェザーネックレスをつけて、
......もう、ほんとチャラいと思った。
「いいよ、来るかわかんないし、来なかったらすぐ帰るから」
「来るかわかんないってどんな奴だよ。来たら俺が一言言ってやる」
「えええー!やめてよー!」
「鈴、気をつけなさいよ、最近変な事件が多いから。
やっぱりお兄ちゃんと一緒に行ったほうがお母さんも安心だわ」
えええ、お母さんまで......
「わかったよ......」
「よし、んじゃ行くか」
仕方なくお兄ちゃんと待ち合わせの駅に向かった。
お兄ちゃんと一緒に歩くと、ジロジロ見られるから嫌なんだよな......
みんなはお兄ちゃんをイケメンイケメンと言うけど、
私はそうかなぁ......って思う。
ちょっと読者モデルみたいなことをしていて、
雑誌に載ったりするから、
どうしても、目立ってしまう。
「交番前?」
「う.....うん」
駅に着き、交番前に立つと、
立っていたおまわりさんが、お兄ちゃんをじろっと睨んだ。
「なんでここなんだよ、居心地悪いな」
お兄ちゃんは腕組をして、隣に立った。