君の『好き』【完】
「吉井......くん」
吉井くんは、走ってきたのか、
汗をかいていて、
肩で息をしながら、お兄ちゃんの腕を掴んでいた。
185センチのお兄ちゃんとほぼ同じ目線で
お兄ちゃんを睨んでいた。
「大切な子なんで、叩かないでもらえますか」
たっ、大切な子.......
吉井くん......
その言葉に嬉しくなっちゃって、
ニヤニヤしちゃって......
吉井くんは、お兄ちゃんの腕を掴んだまま、
その手を下ろした。
「大切?」
お兄ちゃんは、吉井くんから腕を引っ張り返した。
「はい」
「ほんとだな」
「はい」
「絶対に大切にしろよ、俺の大切な妹だからよ!」
「えっ」
吉井くんは、お兄ちゃんと私を交互に見た。
「ごめん、吉井くん。このチャラい人、私のお兄ちゃん」
「チャラいって、どんな紹介のしかただよ!鈴!
普通に紹介しろよ!」
吉井くんは気まずそうに、自分の髪をくしゃくしゃっとして、
「すみません」と頭を下げた。