君の『好き』【完】
「来たじゃん、鈴。よかったな」
お兄ちゃんは私の頭をぽんぽんと撫でた。
「じゃあな、あんま遅くなんなよ」
お兄ちゃんは吉井くんをちらっと見てから、改札の方へと歩いて行ってしまった。
制服姿の吉井くんと、私服姿の私。
一歩吉井くんが私に近づいた。
「お兄さんだったんだ」
「うん.....なんかごめんね」
そう下を向いて謝ると、頭に手を乗せられて、
そのまま上目で吉井くんを見ると、
吉井くんは目をそらして、ぽんぽんと私の頭を優しく撫でた。
「いくらお兄さんだからって......
触られると......やく」
や?やく???
「吉井.....くん?」
こっちを向いてくれない吉井くんを呼ぶと、
吉井くんは私の頭から手を離して、
自分の髪をくしゃくしゃっとした。
「とりあえず、飯食っていい?」
顔を上げた吉井くん.....真っ赤だ.......
「なんだよ」
じっと見つめていたら、吉井くんが下を向いて前髪を揺らした。
「吉井くん?」
下を向いた吉井くんの顔を覗き込むと、
「あのさー」って、ちょっと怒りながら顔を上げた。
「なに?」
私が首を傾げると、
吉井くんは下を向いて片手で自分の顔を覆った。
「調子狂うな......」