君の『好き』【完】
吉井くんは覆った片手を少し離して、
私をじろっと睨むように見た。
「行こ」
吉井くんはくるっと背中を向けて歩き出してしまった。
え、待ってよ......
なんか、吉井くん不機嫌だな......
吉井くんの後ろから、とぼとぼとついていくと、
吉井くんがピタッと立ち止まったから、私もその場に立ち止まった。
そして下を向いたまま吉井くんが私の元に戻ってきて、
何も言わずにそっと手を繋いでまた、
歩き出した。
不機嫌なのかなって、
なんか怒ってるのかなって、思ったけど、
手を繋いでくれたから......
全然こっち向いてくれないけど、
繋いだ手をぎゅっとしてくれたから......
もう、それだけでいいって思った。
駅ビル内のファストフード店に入ると、
吉井くんは手を離した。
「鈴は?昼飯ちゃんと食った?」
カウンターのレジに並ぶ前に吉井くんが聞いてきた。
「う......うん」
店内を見渡すと、
仲良さげなカップルばかりが目について、
私も今、吉井くんと二人......これってデートなんだなって、
そんなこと思ったら、緊張してきてしまった。
「鈴も、なんかちょっと食べるか?」
「えっ」
「ハッピーセット?」
「こ、子供じゃないし......もう!」
ぷくっと頬を膨らませたら、吉井くんが噴き出して笑った。
あ.....やっと笑ってくれた......
吉井くんのかわいい笑顔を見て、私も思わず微笑んでしまったら、
吉井くんは下を向いてしまって、自分の髪をくしゃくしゃっとした。