君の『好き』【完】
「普段......いつもそんな?」
「えっ?」
顔を上げた吉井くんは、また不機嫌そうな顔で、
言葉の意味がわからなくて首を傾げた。
「だから、お前さー.......
やっぱ、いいや」
また、真っ赤だ.....吉井くん。
「んじゃ、何食う?」
目をそらして、カウンターの向こうのメニューの方を向いてしまった。
「私、おなかいっぱいだから......」
私がそう言うと、吉井くんはこっちを見ることなく、
カウンターの方へと歩き出した。
少し離れた場所から、その様子を見ていたら、
吉井くんが手招きした。
少し走って駆け寄ると、
「飲みもんだけでも付き合えよ」って、
メニュー表のドリンクの部分を指差した。
「うん......じゃあ......くぅ」
「ん?」
吉井くんが隣から私の顔を覗き込んだ。
「食うの?」
「違う違う、くう......」
私がメニュー表を指差すと、
吉井くんは噴き出して笑った。
「Qooか。でっかいの?」
「え、ちっちゃいの」
「あはははっ、んじゃMで」
「だから、ちっちゃいのだって、飲みきれないし」
吉井くんはお財布を出して笑った。
「飲みきれなかったら、俺が飲むよ」
えっ.......
吉井くんが......
顔が......熱い.......
吉井くんがお財布からお金を出したから、
私はリュックを前に回した。
「私が払うよ。
買い物、付き合ってもらうんだから......」
前に回したリュックの肩紐を、吉井くんが私の肩にかけ直した。
「こんぐらい奢らせろよ」
「そんな......付き合わせてるのに」
吉井くんはトレイを持って、ゆっくりと向きを変えた。
「付き合わされてるつもり、ないんだけどな......」